第43章 ※現実
[……ここならいいでしょ]
一歩一歩進むたび年季の入った音がする
私達二人しかいないからかより一層響き渡っていた
(オリの中…)
(……逃げられない)
そう感じさせるほど逃げ場がない
この前見た時よりもさらに奥の獅子頭連の人達でも立ち入らなさそうな場所だ
[…………っ]
部屋に入った途端古びたソファにぽんと放り出される
組み敷かれるも
[…………嫌…!]
せめてもの抵抗で彼の口を手で塞ぐも無駄なようだ
すぐさま手を避けられる
[…まだ抵抗するのぉ]
[………なんで]
[何も言わないの]
[…だから何……]
[とぼけないで]
ギロリと睨みつけるも彼にとっては大したこともないようで
[それぇ今言う事?]
機嫌でもとるかのように顎の下を撫でながら
[…まだ言うんだぁねぇ]
[ちゃんには関係ないでしょ]
こちらの表情を読ませないかと言わんばかりに笑みで隠し通している
にたっと接着剤でも張り付いたかのように偽りの笑顔を浮かべて
[………ずるい]
[私は………!]
[じゃあ丁子に会って何がしたいの]
ゾクッとするこの恐ろしい目つき
けれど屈するわけにはいかない
[………っ]
[……それは話をして……]
[話?それは何の?]
[仲間を捨てるなんて間違って………っ!]
それが"逆鱗"に触れてしまったのか今度は私が逆に口を手で閉じられる
ぐぐっと力が籠められ息もしづらい
(…………っ)
まずい 本能的に理解してしまう
これは彼に言ってはいけないことなのだと
何をされるか分からず体が硬直する
[丁子は間違ってない]
[ふざけたことを言うな]