第42章 戦慄
(………ここまで来ちゃった)
結局好意を無碍にできず高架下まで送ってもらってきてしまった
しかも友人と話をするなんて嘘の理由までつけて
仕方ないとはいえ騙してしまったことに心を痛めながら重い足取りで歩いてきたのだ
[いいのか?ここまでで]
[うん…大丈夫…!すぐ来るから]
(……こんなに仄暗かったっけ…?)
(いや)
気になる点は幾らでもあるがまずはここまで来たのだ
覚悟をしたからには行動しなければ
[…気をつけろよ]
[こっから先は獅子頭連の縄張りだ]
[いくらダチが近くにいても何があるかわからねぇ]
(…梶さん)
嘘をついたことをお見通しかのように強烈な瞳の輝きが私を射止める
これ以上何も聞かなかったことを見ると気遣ってくれたのかもしれない
本当だったら聞きたいだろうに
[……うん]
[ありがとう 梶さん]
優しいな 本当に
甘えてしまうことに申し訳ないけど今はそれがありがたかった
[…連絡よこせよ]
[…何かあったらね]
[…じゃあな]
かぽっとヘッドフォンをつけ翻して歩く
行った姿を確認したあと
(さて……)
(行こう)
ガタンゴトンと電車が揺れ動く音が響き渡る
無性に虚しく感じつつ"暗闇へ"一歩を踏み出した