第35章 幸福
[………………というわけでぇ]
[付き合うことになったの…]
[………………]
そこからおじいちゃんは先程の威勢はなりを潜め不服そうではあったけど最後まで条くんの話を聞いてくれてはいた
お前約束守ったのかネチネチ聞きながらではあるが
(でもまさか…)
おばあちゃんに至っては待ってましたと言わんばかりで
それでそれでなんて 私より乙女みたいな顔をさせて聞いてくるものだから正直言うと呆気にとられた
あまり深く言うのも少し気が引けたのでそこは端折って話をしたけどこの様子だと察していたと思っていいかもしれない
(うわ……なんというか)
恥ずかしい
全部分かっていたのかと思うと顔に火でも噴きそうだ
けれど今はそんな場合じゃない
条くんのおじいちゃんは我が事のように喜んでくれて認めてくれたけど私達の付き合いを認めてくれるか分からない
おばあちゃんはともかく最難関はまぎれもなくおじいちゃんなのだから
[……おじいちゃ…]
声をかけた途端
[………おい 坊主]
そう言い後ろに顔を背ける
恥ずかしいのか分からないけど耳がいつもより赤く染まっているような
急に何を言うのかと思えば
[…お前…そう言ったからには幸せにしろよ]
[泣かせたら承知しねぇ]
[……のこと頼む]
[じいちゃん…]
[………もちろんだよぉ]
[幸せにする]
(おじいちゃん………)
頼むなんて
あの強気なおじいちゃんからそんな言葉が出るなんて
認めてもらえたということでいいんだろうか
(嬉しい…)
思わず目に涙が溜まってきてしまう
泣くつもりなんてサラサラなかったのにこんな思いやりのある言葉をかけられては
だったのだが
[あらあら〜…あなたそれじゃあまるで条ちゃんとの結婚を視野にいれて話してみるみたいよ♪]