第33章 決意Ⅰ
[え……あ……!条くん……?]
まさかこんなに早く出てくれるとは思わず心臓が高鳴る
(嬉しい)
率直にそう思っていた
久しぶりに聞く彼の穏やかな声色
それほど彼に会いたくてたまらなかったんだろう
(……って)
舞い上がってる場合じゃない
話に持ち込まないといけないのに
(…話したのいいけどここからだよね…)
(う、う〜ん……)
相変わらずのコミュ障すぎる私
どう話を切り出そうか悩んでいると
[……ちゃんごめん…]
[俺君に嫌なことをしちゃったよねぇ…]
この前の告白のことだろう
あの後電話もくれたのに全然出ようともしなくて
(違う……)
あれはむしろ私が逃げて彼の気持ちを蔑ろにしてしまったのに条くんが謝ることじゃない
私がきちんと向き合わなかったから
(だから今度こそは……!)
ともかく誤解を解かないと思い口を開く
[あ…その……]
[…ちゃんが嫌なら…]
[俺はもう近寄らないよぉ]
[え…………]
穴の中に自分が引き込まれるような暗い気分だ
まずい
この展開は嫌な方向に進んでしまう
そんなの嫌だせっかく気持ちに気づいたのに
嫌
離れたくない
その一心からなのか
[だからぁ……]
[待って……!]
[違うの!]
[…!…ちゃ…ん……?]
自分でもこんなに大声を出せるなんて驚いた
それだけ気持ちが入っていたんだろう
条くんも言葉に詰まるほど驚いて固まってしまっているようだ
申し訳ないけどこれほどの好機はない
(………今だ!)
[………その…条くん]
[あの…少し話せないかな…?]