第28章 番外編② 御礼
[本当……ですか…?]
あんな嬉しそうな表情をしていれば正解なんて分かっているものなのにまた聞き返してしまう
[ああ…うまいこんな桃久々に食べた]
そう言いつつ彼はまた桃を平らげる
よほど美味しいのだろう手が止まらないのか次第にお皿から桃が消え始める
この様子だと彼にとって好物に等しいようだ
こんなに嬉しそうに食べていると食べさせ甲斐があるし何より
梶さんの朗らかな顔を見ることができてよかったとホッとしていた
(ふぅ……)
(もう少し切ってこようかな…)
幸い桃は沢山あって私達家族が食べ切らないほどだ
冷やしているのが数個くらいあるから切ってくるかと立ち上がろうとすると
(っと…あら…)
気づいてないのか梶さんの口元に桃の食べかすがついている
取ってあげようと彼に近づき
[ついてますよ梶さん]
桃が付いている部分を指でとり自分の口に運ぶ
いつも丁子君にしているからこの時は距離感なんて考えたことなんてなかった今思うと梶さんになんてことをしたんだ私
そんなに仲良くなっていないのによくやれたなと呆れてしまうのだが
(うん美味しい)
やっぱり桃は今が季節なのかも
藤川さんもいいもの頂いているおかげもあるからかな
後で私も食べようとそんな能天気なことを考えていると
[……な………な………]
そう言いフォークがカランと音を立てて落ちる
突如顔が真っ赤になって固まっていて口が開きっぱだ
(どうしたんだろ……?)
こんなに赤いなんて体調悪くなったのだろうか
気になってしまい確認のため梶さんのいる方に移動しもう少し距離を詰め始める
[あの……梶さん]
[熱でもあるんですか…?]