第28章 番外編② 御礼
[梶蓮Side]
[気持ちよかったわねぇ〜]
[そうだなまた来なきゃだな]
鶴の湯と書かれた大きな看板
老若男女問わず様々な人が行き交っている
ガヤガヤと賑わっている様子が伝わるが生憎ヘッドフォンをしているせいか上手く聞き取れない
風呂に入るわけでもないのに俺は
(来てしまった)
来るつもりなんて一切なかったのに
あんだけアホみたいに悩んで結果行かなくていいかと昨日思っていたはずが気づいたら足が運んでいた何を考えているんだ一体俺は
別に会っても話すことがあるわけでもない
助けたのは一回きり
お礼なんて別に期待しているわけでも
(……………)
(何のためにここに来たんだ)
自分の行動が理解できないさっきからあーだこーだと言い訳ばかりだしあべこべとした行動ばかり起こしている
あいつ のことを思うと思ったことと違うことばかりする
(病気なのか俺)
後で楠見に聞いてもいいかもしれない
あいつなら詳しく知っていそうだ
[あら………?]
[あなた…………この前の!]
[………………?]
確かあいつの祖母だったか
俺を見つけた途端
[待ってて…!呼んでくるわね!]
[はっ……?おい…………!!]
そう言うと言葉も聞かずとんでもない速さで駆けていく
(は?)
何が何だかわからず俺はだらしなく口を開けただ呆然と立ち尽くしていた