第2章 交際宣言致します
「…………まさか着付けまでできるなんて知らなかった」
あのあと。
花火も見ずに情事にあけくれていたら、いつのまにかお祭りは終わっていて。
気付けば着崩した浴衣と、ボサボサに乱れた髪の毛。
を。
綺麗に元通りにしたのは現在隣を歩いている加賀谷さん。
「出来なきゃヤんねぇよ」
「…………絶対基準そこじゃない。変態」
あはは、なんて豪快に笑っちゃってるけど大丈夫?
これからあたしたち、敵地に乗り込むんだよ?
いきなりラスボス出て来たらどーすんのよ。
「…………」
「何か」
「…………加賀谷って、意外と俺様だよね」
「…………はい?」
「なんとなく知ってたとゆーか予想はしてたけど、確信した」
「?」
「いいよわかんなくて。独り言」
スマホの画面越しに髪型メイク確認して、バックへとしまう。
そのまま立ちあがろうとすれば。
勢いよく右腕が引かれて。
軽く。
唇が触れた。
「?」
「戻ったら独り占め出来なくなるから」
「な…………っ」
に…………っ。
何それ反則。
胸締まるからっ。
「…………夜なのに真っ赤なのわかるな」
隣に座ったまま、加賀谷の左手の甲が頬へと触れて。
ふ、て。
目を細めた加賀谷と視線がかちあった。
思わず腰抜けて。
その場にストン、て。
座り込めば。
さらに加賀谷の指先が乱れた髪を一掬い、耳へと掛けてくれた。
「な、な、なな何…………?」
「んー、かわいいなって思って。ずっと見てられる」
「!!」
だから!!
「そーゆーとこだよ!!加賀谷!!」
真っ赤になってそっぽむけば。
頭におっきい手のひら。
ポンポン、て。
撫でられたあと。
立ち上がる気配に合わせて視線を戻す。
「さて。戻りますか」
…………いつもの、加賀谷だ。
良く知る。
加賀谷彗の顔。