第2章 交際宣言致します
「加賀谷!!」
少し大きな声で加賀谷を呼べば。
加賀谷の視線が、戻ってきた。
「…………やだよ、加賀谷」
言葉がわかんない。
どう、言葉にすればいいのか。
加賀谷と、いつもどんな風に話してたっけ。
「まだ、一緒にいたい…………」
言葉を口にすればするほど冷たい空気が流れちゃう。
違うのに。
ほんとはもっと甘えたい。
もっと近くにいたい。
触れたい。
もっと加賀谷を感じたい。
俯いて。
加賀谷の浴衣の裾を少しだけ掴めば。
ぐ、て。
その手が引かれて引っ張るように、加賀谷が歩き出した。
「え、ちょ…………っ、と加賀谷?」
無言で、人混みをずんずんと歩いてく。
後ろで花火の上がる音が響いて振り返ると、加賀谷のスピードに足が負けた。
慣れない草履なんて履くから足がもつれて。
だけど。
転ぶ前にあたしをちゃんと拾いあげてくれる逞しい腕。
余所見したあたしが悪いのに。
慣れない草履なんか履いたあたしの責任なのに。
いつも加賀谷は。
申し訳なさそうに、謝るんだ。
あたし、それがずっと嫌だった。
…………だけど。
「余所見すんな」
「え」
「ん」
手を出す加賀谷につられて手を出せば。
その手を繋いで。
また、ぐんぐんと花火と反対へと歩き出す加賀谷。
に。
今度は早足で付いていく。
今。
『余所見すんな』
距離が、変わった気がする。
お嬢、と、組員の関係からもっと違う。
近くに。
たった一言。
それだけでこんなに心臓が加速する。
加賀谷の表情に。
言葉に。
体温が変わる。
恋、って。
やばい。