第1章 冗談なんかじゃない
「…………まぁ、指詰めるくらいじゃすまねぇか」
ん!?
「なんの話!?」
いきなり降って湧いた物騒すぎるネタに思わず加賀谷を見た。
「まかりなりにもあいつ三園組の人間だしな。お嬢と玲の婚姻っつったら組が動く。組長が玲をあんたの婿にって公言した以上あちらさんにも話いってんだろ。それを俺が横から掻っ攫ってったとあっちゃぁおもしろい話じゃねぇだろ」
涼しい顔してなんてこと言ってんのこの人。
人の頭撫でてる場合ではなくない?
「そ…………っ、そこまでわかってんのにどうして!!」
「…………あんたがそれ言うのか」
「…………ですよね」
あたしってばなんの考えもなしに!!
そりゃそうだよ。
そりゃ逃げたくもなるよ。
あたし。
なんてことしちゃったんだろ。
つまり。
加賀谷は三園と父に、ちゃんと操を立ててただけで。
それをあたしが。
ぶち壊した。
「…………ごめんなさい」
一気に顔色を変えたあたしに。
「あんたのためなら指も命も惜しくないっつってんだよ」
加賀谷はそう言って。
誇らしげに笑ってみせた。
「あたしが、なんとかする」
「は?」
元はといえば元凶あたしわなけだし。
だけど、いくらあたしが強引に迫った結果こうなったんだとしても。
罰せられるのは間違いなく加賀谷なんだ。
あたしが組長の娘で、女だから。
立場的弱者なのは、加賀谷の方だ。
「あたしが加賀谷の指も命も捨てさせない」