All is Dream Box【春パワー全開】*短編集
第11章 mumu/別れの時
「……行きなよ、送別会」
「まだ行かん」
立ったまま、フェンス越しを見つめる流川。彼が見ているモノを、隣にいる今だけでも一緒に見ていたくて、私も同じように見ていた。
「……今は、手を伸ばせば届くけど」
そう言って、私の手を自分の大きな手で包んだ。
「アメリカに行ったら、届かねぇ。その間、他の奴に取られたら……」
強く握られた手を握り返して、私は言った。
「……大丈夫。……ずっと待ってる」
「……」
ゆっくり重なり合う二人の影。……あなたが帰って来るまで、この思いは伝えないでおこう。
「じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
笑顔で彼に手を振った。……バタン。扉が閉まり、あなたの姿が見えなくなったあと、私は声を上げて泣きじゃくった。
「流川のバカ……。行かないでよ……。………好き……。流川……」