第36章 愛を伝える日 太宰治
『もう、、、太宰くんったら、、、此処かな、、、?』
いつもの如く仕事をすぐサボる彼、何処にいるのかと連絡をすれば珍しく返信がすぐ返ってきた。
彼から教えられた場所へ向かうと其処はとある酒場(バー)だった。
昼間っからお酒を呑んでるなんて国木田くんに知られたらかなり面倒なことになるな、、、、と思いつつ恐る恐る扉を開けた。
カラン、カラン
「やぁ、!待ってたよ!!」
バーカウンターに座り、にっこりと微笑むのは私の恋人、太宰治だ。
『太宰くん!早く戻らないと国木田くんがストレスで倒れちゃう』
「ねぇ、今日何の日か知っているかい?」
私の質問はフル無視でニコニコした表情で質問してくる彼、、、
勿論知っている、今日は2月14日ヴァレンタインデーだ。
この日の為に昨日は徹夜して猪口齢糖(チョコレート)を作ったのだから。
仕事の後は私の家でゆっくり過ごす予定で、猪口齢糖も家に置いてある。
『知ってる、ちゃんと用意してあるから早く事務所に戻ろ!、、、へッ!?』
ガサガサっと音がしたので振り向くとそこには、、、
「愛しているよ」
薔薇の花束を持ち、王子様のように跪いた太宰くんの姿、、、
突然のことに驚きつつも、どうしたのかと訊ねた。
「ふふ、日本ではヴァレンタインデーは女性から男性へ猪口齢糖を贈るものになっているけれど、本来は男性から女性へ愛を伝える日なのだよ?」
そう云い乍ら太宰くんは花束を渡してくれた。
『そうなんだ、、、ありがとう太宰くん!とっても嬉しい、私も大好きだよ!』
付き合ってから初めてのヴァレンタインデー、そして太宰くんからの初めてのサプライズに胸がきゅんきゅんしていた。
「あっ!あとこれも!」
『?、、、これは、、、?』
差し出されたのは綺麗にラッピングされた小さな箱だった。
「ふふ、開けてみてくれたまえ!」
そう云うので、包装紙を取り中身を見ると、、、
『うわぁ!これなに?凄く綺麗!』
"これは猪口齢糖だよ"と太宰くんは教えてくれた。
宝石のようにキラキラとした猪口齢糖に私の手は引き寄せられ一粒掴んだ時だ、、、、、