第34章 猫の恩返し 中原中也
「すみませーん!」
『はーい!』
中也さんの前から姿を消して一ヶ月が経った。
私は今ヨコハマの片隅にある老夫婦が経営する書店で働いている。
情報屋の仕事はあの日から止めた。
私の異能力"ネコノ化身"は猫に姿を変えることができる。
情報収集するにはぴったりの異能力だ。
幼い頃に両親を亡くした私を拾ったのが西条だった。
西条から私の両親を殺したのはポートマフィアだと教えられていた。
"お前の両親を殺したポートマフィアを潰すんだ" 西条の言葉だ。
どうせ死ぬなら両親の仇をとってやる。
復讐心のみでここまで生きてきた。
然し、終わりは突然だった。
いつも通りの取引のはずだった、、、。
ところが突然ポートマフィアが現れたのだ。
運良く隙をつき異能力で姿を変え猫になったものの、流れ弾がお腹に当たった。
死を悟り、その時が来るのをただじっと待っていた、、、、。
意識が朦朧とする中で声がした。
その声の主こそ、彼、、、、中也さんだ。
最初は両親の仇の為だった。
でも彼の不器用なりの優しさに復讐することすら忘れていた。
こんなにも心穏やかに過ごせる日がくるなんて、、、、
ずっと猫のままでいい、、、
ずっと中也さんのそばにいたい、、、
そんな淡い願いをいつしか願っていた。
然し、そんな願いも儚く散った。
太宰さんにバレてしまったからだ。
太宰さんはなんとなく嫌な人だった。
私を見る瞳が嫌だったし、すぐ中也さんに嫌なことを云うからだ。
だからいつも威嚇していた。
然し、今はそんな太宰さんに感謝している。
あの日、私は処刑される筈だったのだから、、、