第2章 失われた日常
「……ニノ、今頃なにしてるだろう……もう逢えないなんてそんなの……そんなこと、ないよね…?」
恋人との別れを経験したことが無い訳ではなかった
経験が無いどころか、ニノと付き合う前は、それこそ良いなと思った子とはスグに付き合って
…飽きて、捨ててしまった事だってあった
だから、こんなに真剣に誰かを愛したのは初めてだった
生涯、愛し続けようと思える人に出逢えて、俺は変わった
それまで、遊びの延長線上にあった恋愛は、ニノに出逢って、彼を真剣に愛して、意味合いを変えた
俺は自分が、脇目もくれずに誰かを愛せるなんて考えてもみなかった
だけどそんな俺にニノが教えてくれたんだ
たった一人を愛し続ける幸せを…
(…ニノ…ニノ………ニノ……)
落してしまった携帯をぼうっと見詰めながら、愛する恋人の名前を心の中で呼ぶ
気まぐれで、我儘で、嘘つきで…でも…
俺は知ってる…本当は、真面目で、真っ直ぐで、素直なんだって事を
ただ、それを表に出すのが照れくさくて、わざと捻ねたフリをしてるんたって
そんなニノは、俺にだけは時々本当の自分を曝け出してくれる
…そんなニノが、俺は愛しくて仕方が無かった
「……ニノ……絶対に、連れ帰るよ……ニノは………俺のモノなんだから」
君を失う事より怖い事なんかこの世に存在しない
何を失っても、君だけは失う訳にはいかない
…あの夜、俺は心に誓ったんだ…
生涯君を愛し、守り抜こうと
「………あ」
(……そう言えば、俺……ニノの実家、何処だか知らないや)
「……おーのくんに訊こぉっと。」
俺は落した携帯を拾い上げた