第5章 眠れぬ夜が明けて
「食欲が無いんだよ」
「…相葉様の声を聞いたら、少しはお元気になられますでしょうかね?」
「……え?」
驚いて体を起こしたら、景山が俺の方にゆっくりと顔を向けた
眼鏡が反射して、その表情はイマイチ解らなかった
「私に、相葉様の代わりが出来れば良いのですが」
「……はぁ?」
「出来そうにもありませんが」
景山はそう言うと何時もの様に眼鏡を中指で上げて、軽くお辞儀をして部屋を出て行った
「……だから、何なんだよ」
訳解んないし…マジで嫌になる
(明後日か…いよいよ、逃げられないんだな…俺)
俺は深い溜め息を付くと、仕方なくベッドから起きあがった
「…どうせ二度と逢えないなら…最後にもう一回くらい逢わせてくれたって良いのにさ」
(そんな気が回せるヤツは、この家には一人も居ないよな)
俺はもう一度深い溜め息を付いて、会いたくも無いオッサンに会う為の身支度を始めた