第5章 眠れぬ夜が明けて
許すも許さないも
俺は初めから母を恨んではいなかった
寧ろ、母だけでもこの地獄から解放されて良かったと思っている
蝶よ花よと愛され大切に育てられた母に
愛とは無縁の結婚生活を耐えきる事など、出来る訳が無かった
そして
精神的にも肉体的にも弱り果てた母を見かねた彼女の両親が、母を家に呼び戻すような形で離婚したのだ
母はそれでも
俺を置いて行く事など出来ないと、最後まで離婚を拒み続けていたらしい
でも結局ストレスで倒れた事がきっかけで
半ば強制的に離縁して実家へ連れ戻されてしまったのだ
そんな母を、恨める訳が無い
こんな薄汚れた根性の悪い連中の巣窟にあって、少女の様に純真であり続けた母が
俺は、大好きだったから…
「…そう言えば、母さんって何となく大野くんに似てるなぁ」
抱えた膝から顔を上げて、だから好きなのかな、なんて思っていたら
ドアをノックする音がした