第5章 眠れぬ夜が明けて
俺には腹違いの弟が居た
クソみたいに性格の悪い母親に似ず、素直な良いヤツだ
その弟が家を継いでくれたら俺は自由になれるのだけど、そうはいかない事情があった
弟が家を継げない理由は二つ
一つは、家は長男が継ぐと言う家訓があると言う事
そしてもう一つは、母親の家柄
先祖を遠く遡ると宮家に繋がる鼻ッぱしの高い二宮家は、家柄をバカみたいに重んじる
意地の悪い継母は、育ちもよろしく無かった
元々親父の行きつけの高級クラブのホステスだったアイツの息子に
アホみたいに歴史のあるこの家を継がせる訳にはいかない
後継ぎの母親は、何処まで先祖を遡ってもやんごとなきお嬢様で無くてはならないのだ
だから
皇族に縁のある俺の母親に白羽の矢が立って、親父と結婚させられた
…そして俺を産んだ母は、お役御免とばかりにこの家を去って行った
その時
俺はまだほんの5歳だったけど、今でも母親が出て行った日の事をハッキリ覚えている
悲しそうに俺の顔を見詰めながら、小さな声で
「ゴメンね、カズちゃん…本当にゴメンね…」
そう言って、優しく…優しく抱きしめてくれた
そうしながら、また小さな声で俺の耳元に最後の言葉を残して
母は、この家を出て行った
「一生、お母さんを許さないで」
そう、言い残して