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お散歩日和―にのあい―

第2章 失われた日常





「はぁ?何言ってるのアンタ…

ニノは?ニノは何て言ってるの?」

「ぼっちゃまには、まだ何もお伝えしておりません

今夜、大旦那様からお話しされるそうです」

「オオダンナさま?」



「景山」と名乗った執事さんは、片手の中指で、眼鏡をクイッと上げて言った



「和也ぼっちゃまの、ご祖父様です」

「ああ、お爺ちゃんね!」

「……」



冷たい笑みを浮かべて俺を見ると、景山さんは「では、私はコレで」と言って立ちあがった



「ちょっと待ってよ!ニノは結婚なんかしないって言ってたよ!」

「そうは行きません

ぼっちゃまの御身は、ぼっちゃまだけの物では御座いませんから」

「どうゆうトコ?」

「貴方の様な一般の方にお話ししてもご理解頂けないでしょう

つまり、和也ぼっちゃまと貴方は、住む世界が違うと言う事です」

「住む、世界?」

「……どうぞ、ぼっちゃまの御為にも、お諦め下さい」

「……」



(どうして?)



丁寧に頭を下げて部屋を出て行く景山さんの後ろ姿をぼんやり見送って、俺は途方に暮れた



(違う世界って、何なんだよ…同じ日本人じゃん)



「……」



目の前に置かれた分厚い封筒

俺も一応店を任されて居るから、ソコソコの現金は毎日目にはしていたけど、その厚みは半端なかった


…多分、三百万くらいはあるだろう


そんな大金を、ポンと息子の恋人に手切れ金として出す位、ニノの家は裕福だった



(…裕福とか、そう言うんでもないのか…

て言うか普通、手切れ金とかって、不倫相手とかに渡すもんじゃないのかな??)



なんて思ったりする俺

大体、手切れ金なんてリアルに昼ドラとかの中の演出で、現実の世界であるなんて思ってもみなかった



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