第2章 失われた日常
「じゃあ、行ってくるわ」
「うん、気を付けてね〜♪」
初詣の帰り道
俺はニノをホテルのロビーまで送って行って、其処で別れた
ニノの家はすんごくお金持ちで
毎年元旦の夜に高級ホテルの大ホールを貸し切って、盛大なパーティーを催していた
ここ数年ニノは、そのパーティーに「めんどくせぇ」とか言って出席していなかったんだけど
今年はニノのお父さんから直々の「絶対出席する様に」との御達しがあり、渋々出席する事にしたらしい
「あ〜、三日もニノと逢えないのかぁ…寂しいなぁ」
俺はブツブツ独り言を言いながら駅に向かった
三日
たった、三日の筈だった
三日経ったら、また何時もの日常がやってくる
二人の幸せな日常が…そう、思っていた
だけどニノは、三日経っても帰っては来なかった
三日後、俺の元に訪れたのは「手切れ金」を持った、ニノの家の執事さんだった
「……結婚?」
俺は突然の出来事に言葉を失った
(何言ってるんだ?この人)
俺は目の前に付き出された分厚い封筒を前に、呆然とした
「はい、和也ぼっちゃまはご結婚なさいます。
ですから、貴方にはぼっちゃまと別れて頂きます」