第5章 眠れぬ夜が明けて
もう二度と帰る事が許されないと知った夜は、殆ど眠る事が出来ず
無駄に寝返りばかりを打っている内に明けて行った
最悪な朝を迎えた俺は、一人で寝るのには大き過ぎるベッドで眼を覚ました
ある訳も無い
目の前にある筈の大きな背中を探して虚しくシーツの上に手を這わす
夜が遅い雅紀を起こさない様に
何時も眼が覚めると、そっとその暖かい背中に頬を寄せるのに
その背中は、何処にも無かった
その背中が…その暖もりが恋しくて、自分の頼りないカラダを抱きしめる
「……何で居ないんだよ…………バカ」
また涙が滲んで来て、慌てて目を擦る
「…しっかりしろってんだよ…」
自分に言い聞かせるように呟いて、重たいカラダをベッドの上に起こして
ベッドサイドに置かれた真新しい携帯を手にとって眺める
「…まだ、寝てるかな…仕事、今日からだったな…」
(…声が、聞きたいな…
…顔が、見たいな…
……逢いたい、なぁ…)