第3章 二宮財閥
迎えに、来てもらった所で、どうにもなりはしない
そんな事は解っていた
例え雅紀が俺を迎えに来てくれたとしても、俺にその手を取る事は許されない
そんな事は十分承知の上だった
だけど
「雅紀…俺を奪ってよ……ここから……奪い去ってよ…」
そんな事出来ないのに
そんな事許されないのに
「…もう一度…もう一度だけでもいいから…
……逢いたいよ……雅紀」
ベッドの端っこに蹲って
俺はただ、雅紀が自分をココから連れ去ってくれれば良いのにと願っていた
…それが
絶対に叶わない事だと知りながら…
「景山、和也が脱走しないようにしっかり見張っていろ」
「はい、旦那様」
大旦那様をお迎えしての夕食会の席で、ぼっちゃまは初めて結婚の話しを聞かされた
実の所
この結婚話は一年程前から進んでいて、もう既に式の日取りや段取りまで決まっていた
…つまり、始めからぼっちゃまの意思は関係無かったのだ
一生の一大事である結婚を
自分の知らない所で決められて、会った事も見た事もない女と結婚させられる
しかも、絶対に拒絶する事は許されない
そんな非現実的な事がまかり通る世界が、ぼっちゃまの本来生きる世界だった