第3章 二宮財閥
大声で雅紀の名前を呼んだら堪えていた涙が一気に溢れだした
必死に掴まれた腕を振りほどこうとしていたら、ガードマンの肩越しに間の抜けた声が聞こえた
『すみませぇ〜ん!大野ですけどぉ〜』
「………大野くん?」
泣き濡れた顔を上げると、ガードマンの後ろに見えるモニターに大野くんの可愛い顔が映っていた
ソレを見た景山が俺をガードマンに押し付けると
「ぼっちゃまを離さない様に」
と言ってインターフォンを取った
「…お帰りになってはいませんでしたか、大野様」
『だって、和也君が心配で…
相葉くんなら先に帰ってもらいましたから、話だけでもさせてはくれませんか?』
(…帰った…?)
大野くんの言葉に脱力する俺をちらっと見て、景山が言った
「…では、五分だけ…インターフォン越しで宜しければ」
『有り難う御座います』
「…ぼっちゃまを此方に」
「はっ!」
ガードマンに腕を掴まれたまま景山の所まで行くと、景山が俺にインターフォンを手渡した
「大野くん?大野くんっ!」
『ニノ!大丈夫?』
「大野くんっ!雅紀…まさ、き…」
涙が勝手に溢れて来て喉がつかえて上手く声にならない
そんな俺に大野くんが優しく言った
『ニノ?伝言、言うね?』
「で…ん、ごん?」
『うん、相葉ちゃんから…“愛してる、必ず迎えに行くから”だって』
「…ぅん///」
胸が熱くなって、溢れる涙が止まらない
(……雅紀///)
『ニノ?必ず相葉ちゃんが迎えに来てくれるからね?
僕も翔くんも、何時でもどんな時でもニノの味方だからね?』
「ぅん…///」
『ん?なぁに?…翔くんも何か言うの?…ニノ、ちょっと待っててね?』
「うん…」
「お時間です」
景山が俺の手からインターフォンを取り上げた
『おぉ〜い!ニ…』
ブツッ
「……」
(相変わらず間が悪い男だ…櫻井翔(苦笑))
苦笑いする俺の肩を掴んで、景山が何時もの営業スマイルで言った
「少しはお気がお済みで御座いましょう?
大旦那様が見えるまで、部屋でゆっくりなさって居て下さい」