第6章 独眼竜が出てきたらどうしよう
何故、政宗が宿敵である幸村に化けていた小助を助けようとしたのかはわからない。
とっさに近くにあるものを掴んだとも考えられないこともないが、よほどしっかりと抱きとめてくれたのか。それほどに小助の怪我は軽かった。
小助も小助自身の行動には疑問符を浮かべる。
濁流に気が付いたとき、何故立ち尽くす政宗の腕をとってしまったのか。
目が覚めてすぐ、何故消えかけていた政宗の命を救ってしまったのか。
今もなお、何故政宗を救おうとしているのか。
政宗が小さくうめき声をあげる。
沸かした湯に漬けた布を持ち上げ、唇の上に水滴を垂らしてやる。
少しだけその表情が緩んだのを見計らい、額に触れれば、先ほどより熱い。それにも関わらず体を丸め、薄い掛布の中で震えている。
まだ熱が上がるのかもしれない。
政宗が身に着けていたものも乾かしてはいるが、まだ水気を含んでいて、とても被せられる状態にない。
これ以上は、温めるものが何もなかった。
布を湯で清めた小助は、身に着けていた衣服をすべて脱ぎ捨てた。
汚れていた髪を梳いて、汚れた体を布でぬぐう。
これは主への裏切りではない。
小助の主を……結果的に小助を守ろうとしてくれた恩人への礼。
また佐助に怒られるだろうか。
ならば、己の冷える体を温めるために利用した。そう言えばいい。
そう己に言い含めて、小助は政宗に掛かる布をめくりあげた。