第3章 瓜二つでみまちがえた
「さて、穴山の子よ」
「なーにぃー」
「お主は今日からワシの家来になる。穴山そうだのう……小太郎、小次郎……小助! 穴山小助というのはどうだ!!」
「あなやまこすけ?」
「そうだ、穴山小助。よろしく頼むぞ」
「うめは、あなやまこすけ。よろしくおたのみもうす」
聞きました。うちの子ちゃんと挨拶もできるのですわよ。
うん、でも、ワシの子なんておっしゃるから、てっきり養女かと思ったら、家来?
こんな小さな子が一体なんの仕事をするっていうの? この子もこの子だわ。
わかっているの? 今あなたは自分の人生を決めてしまったのよ。
ああ、そんなに皿を舐めて。何もわかってないわね。
わかってなくても本人同士でけりがついてしまった以上この母はもう突っ込めません。
ちらりと横にいる佐助くんを見やった。表情は全く変わらない。表情は変わっていないが足で店の床にのの字描いてる。ねえ、もしかして飽きたの? 今、私の子供の人生の岐路だったのよ。もう少し興味持ちなさいよ。
「うめ?」
疑問符をつけた、お館様(仮)の目が私の方を向く。
「その子の名前です」
婆様が餌付けしていた鳥からとったんだけど、「穴山うめ」良い名前よね。
その名前にするとなんでも長命になるっていって、箒と塵取りまでそう呼んでたっけ。
「ほぉー、女子のような名前だな」
「こすけは、おんなのこでござる」
「なんと! 勇ましい面構えゆえ、間違えてしまったのう!」
「きにするなー」
「寛大な女子じゃ!」
ガハハッと豪快に笑うお館様(仮)とそれを真似する私の娘。
ああ、天国にいる貴方。貴方はよくこの職場でまっとうな神経を保てていましたね。
あの子が楽しそうなので、私はもう諦めました。というより、もうついていけそうにありません。
どうか私の分も、私たちの可愛い子を見守ってくださいな。