第3章 瓜二つでみまちがえた
夫の討ち死を聞かされた時、まず頭をよぎったのはこれから自分どうなるかという不安だった。
武士の娘として生まれ、お家の繋がりのため顔も知らない男の家に嫁いだ。
祝言にて初めて顔を合わせた夫となる男は、優しげに目を細め笑うそんな人だった。
生家とは違う暮らしに慣れることはなかったが、最初の印象そのままに優しい夫と子供に恵まれそれなりに幸せな暮らしだったと思う。
それなのに彼の人を失った悲しみよりも、明日の我が身を尊いでしまう私はなんて酷い女だろう。
「……もし」
低い声に顔を上げれば、目の前に山のようにがっしりとした男が立っていた。
「こちらの童の御母堂ではありませんかな」
男がかがむと、男の肩の上でキャッキャとはしゃぐ我が子の姿。
「かかさま! ヤマのオジサンおおきいの!!」
母と同じ感想を舌足らずの言葉と短い腕をめいっぱいに広げて懸命に伝えてくる。
その姿は非常に可愛らしいが、毛髪のない男の頭をぺたぺたと嬉しそうにはたくのはどうしたことか。
慌てて子供を抱き上げ、髪が乱れる勢いで頭を下げた。
「申し訳ありませぬ。私が気を抜いておりましたばかりにご迷惑を」
「いやいや、ワシも間違えて連れ帰ろうとしてしもうてな」