第2章 ❄︎大人になるということ。〜爆豪勝己2
「いやー、あけましたな!」
「もう1ヶ月半経ってるけどな!」
「去年は新年会すらできないくらい忙しかったんだから上等上等〜」
居酒屋の少し大きな個室を貸し切っている、元雄英高校ヒーロー科の、現ヒーロー達。
と言っても、文字通り”ヒーロー"をしているのは全体の6割ほどだろうか。現場に出て活躍する立場を辞め、サポート側を務める者もいれば、全く異なる仕事に転職した者だっている。
まあどんな仕事をしているにしろ、こうやって定期的に集まって仲良く騒げるぐらいの絆は、高校三年間でがっちりと結ばれているものだ。
「しかし今年は奇跡的にほぼ全員集まれて嬉しいぜ…!いつもだれかしら仕事やら急用やらで…!」
いつも幹事を務める切島がすでに酔っているような声色で拳を握り涙を浮かべている。
「あん時は悪かったって〜、忙しかったんだよぉー」
同じように酒周りが早そうな雷がその方をポンポンと叩きながらも、もう片方の手に持っているジョッキを口に運ぶ。
「わたくしも一度どうしても来られず申し訳ありませんわ。」
「俺たちゃヒーロー科だぜ、しょうがねぇよ。」
八百万や瀬呂は強いらしく、まだ酔ってはいないようだ。
他の同級生達もつまみ料理を口に運び、近くに座るものと軽く話しながらも、なんとなくは切島達の会話が中心にはなっており、耳を傾けている。
「でもやっぱお前が来てくれんのはマジでレアだぜ…!忙しい中あんがとよ!!爆豪!」
「るせぇ…」
切島にガッ!と音が出そうな勢いで肩を組まれる現No.1ヒーローの爆豪。
「お前も素直になれよぉ爆豪ぉ〜、久々に俺らに会えて嬉しいだろ?」
「テメェとは先週現場で会ったばかりだろうが。」
雷との掛け合いにも懐かさを感じたのか笑いが起こる。…が。
「ほんとに久しぶりだよね!このメンツ見るの!」
「ケロ、そうね三奈ちゃん。でも…」
「やっぱなんか、うん。少し寂しいよね。物足りないというか…」
「やっぱり誰もいないんやね、ちゃんと連絡繋がる人…」
女子達の会話に、自然と一同が静かになった。