第6章 人生を変えるキス*
side.七海健人
急いで家に帰り、
リビングを覗く。
すると名前さんは
一点を見つめて呆然としていた。
いつもなら
笑顔の貴女が出迎えてくれるのに。
「名前さん」
「えっ?あれ?七海さん?今何時?」
名前を呼んで
漸く私の帰宅に気づいた。
時間を忘れる程、
何を考えていたのですか?
「7時ですよ」
「やだっ!ごめんなさいっ!すぐご飯作るね」
名前さんの目が赤い。
泣いたであろう痕跡を見つけ、
更に心中穏やかではなくなった。
急いで私の横をすり抜けていく
彼女の手首を掴む。
「待って下さい」
「えっ?」
「誰が貴女を泣かせたんですか?」
「えっと…」
驚いた顔をして、
私を見上げる名前さん。
彼女はそのまま黙り込んでしまう。
私には言えませんか?
「五条さんですか?」
「違っ!」
お願いだから、
私の知らない所で
傷つかないで下さい。
そして五条さんでも
他の誰でもなく、
私を愛して下さい。