第2章 それは「運命」で「偶然」で「必然」の出来事。
舌打ちと共に教室を後にする彼の背中を見る事しかできなくて、一人取り残されている緑谷くんにそっと近づいた。
「大丈夫?」
「うん、いつものことだから」
「……まさか、自殺とかしたりしないよね?」
「し、しないよ!!するわけないじゃないか!!」
「そっか、良かった」
首がもげてしまうのではないかと思うほど、勢いよく横に振る緑谷くんにほっと胸を撫でおろし「じゃあ、またね」と言って、自分の教室に戻ろうとした。
「ちゃん」
震える声に足を止める。
振り向くと制服の裾を握り締めて俯く緑谷くん。
何かを言いたそうにしているけど、視線を彷徨わせた後「やっぱりなんでもない」と弱弱しい笑顔を向けた。
そう言えば、彼とこんな風に話したのは何時ぶりだろうか。
去年も今年もクラスが違うから、そうそう話す機会はなかった。
ご飯のおすそ分けで家に行くことはあっても、「はい、これ」「ありがとう」くらいしか会話はなかったし、今だって大した会話はしていないけど、でも久しぶりに緑谷くんの顔をちゃんと見たような気がする。
そんなことを考えながら学校を後にし、家路に着く。
今日の晩御飯なんだろうなとか、昨日はハンバーグだったから魚かなとか、魚だったら鯖の味噌煮がいいなとか、頭の中はご飯のことでいっぱいだった。