第6章 雄英体育祭
「騎馬戦の記憶……、終盤ギリギリまでほぼボンヤリとしかないんだ。多分奴の"個性"で……」
尾白くんの言葉にハッとする。
私も彼と同じだ。
心操くんに声を掛けられてから記憶がはっきりしない。
尾白くんは言った。
チャンスの場だとはわかっている。
でも、力を出し合い争ってきた座で、こんなわけわかんないままそこに並ぶことはできない、と。
気にしすぎだとみんな言うけど、尾白くんのプライドが尾白くんを許さないんだ。
同じ理由でB組の庄田くんも棄権すると言った。
奇妙な話になってきたけど、そもそも中継もしている中でやむを得ない事情以外の棄権はありなんだろうか。
そんな疑問を抱いたけど、それは杞憂に終わった。
ミッドナイト先生が「青臭い話は好みだから二人の棄権を認める」と言った。
好みで決まるなんて、雄英はどこまでも自由だなぁ。
繰り上がりの5位はB組の拳藤さんチーム。
でも、拳藤さんは最後まで頑張って上位キープしてた鉄哲くんたちだと出場権を譲ってくれた。
と言っても2人しか出れないから、公平を期すためにじゃんけんで決めることに。
結果、私と鉄哲くんがトーナメントに出ることが決まった。
「頑張ってね、廻さん」
「ありがとう。頑張るよ」
「というかなんでチアの格好してんだ、A組の女子は」
「それは聞かないで」
不思議そうに首を傾げる泡瀬くんだったけど、詳しい事は聞かないでほしい。
とある男子生徒に騙されたなんて口が裂けても言えない。