第2章 マッシュ・バーンデッドと不思議な出会い
入学式から何日経ったっけ?
春の気温のせいで二度寝が心地よくて、ついついルームメイトのフィン君に迷惑をかけてしまう。
この間、タケ先輩から無理やり誘われたデュエロの大会も終わったばかり。
日差しも空気も何もかもが気持ちがいいから、筋トレも快適だ。
それと…
最近、少し気になっていることがある。
イーストンに入学してから、どこからか暖かい視線で見守られている気がするんだ。
気づいたのは、入学してすぐの事。
声もかけるわけでもなく、僕のことを遠目で見ているようなそんな気がする。
だけど、誰かって解らないし、見当もつかない。
いつも視線に気づいてそっちを見た時にはもう気配すらないんだ。
嫌な感じというわけじゃなく、なんだか不思議な感じなんだ。
言葉では表現できないけど。
「マッシュ君。授業遅れちゃうよ」
「あ、そうだった」
やってしまった。
ついぼーっとしてしまってたらしい僕はフィン君によく注意される。
次の授業がある教室に向かうべく、僕はフィン君と一緒に移動する。
中庭を突っ切って、たくさんの生徒がにぎわうのを縫うように進む。
ふと、こっちに向かってくる、ひときわ目を引く女の先輩に目が行った。
一般的な人肌より凄く真っ白な肌とロングヘアで眼帯をしていない方の目が灰色の先輩。
すれ違った瞬間、一瞬フワッて香った甘い花のようなニオイがなんだか心臓をわしづかみされたように苦しい。
頭で考えるよりも早く体が動いて、その先輩の袖口を掴むと、驚いた先輩は小さな悲鳴を上げる。
「す…すいません。あ…あの、先輩どこかで会ったことありますか?」
やってしまった…。
どうしよう。
先輩も、ちょっと困ったような顔してる。
「ん~…人違いじゃないかな?ごめんなさいね?」
「いいえ。こちらこそ…ごめんなさい…」
少し困ったような顔をしていたけど、ただ思ったことを伝えたら、案の定否定された。
それはそうだ…。
なんてこった…。
「気にしないで。新入生だよね?ようこそイーストンへ」
人のよさそうな笑顔を僕に向けて、社交辞令っぽくふるまう先輩を見ていて心が痛むのは何でだろう。