第1章 オルカ寮生徒と編入試験
自身の研究室に戻ったルドヴィカには、ルームメイトがいない。
というのも、彼女のイヴルアイを見せる事で面倒ごとを起こさないための配慮でもあった。
だからとて、寮監督生になるほどの才覚も持ち得て、それなりに人望がある。
女子寮の生徒はおろか、ルドヴィカの左目の事情を知るものは、マーガレット・マカロンと、アドラのレイン・エイムズとレインの友人であり、ルームメイトであるマックス・ランドくらいだろう。
いつも一人で行動し、神出鬼没な彼女のことを気味悪がる生徒も多いが、対して彼女はそれを気にしない。
テーブルにずらりと並ぶ、フラスコやビーカー、試験管の数々。
彼女の手にはジキタリスを混ぜた薬茶。
いつも研究に没頭するルドヴィカだが、
今日はどうやら外ばかりが気になっている。
「まさか....、イーストンに来ちゃったんだね…」
ルドヴィカは暖かい薬茶の入ったマグカップを両手で持ちながら、編入試験会場の方角をしばらく眺めていた。