第8章 2日目
今日もまた、あの女の子がやって来た。
今度はバケツを持っていた。人間用のではなくて、手乗りMOB用の。
それをどうするんだと聞いてみても人間の女の子にはさっぱり伝わっていなかったみたいなんだよなぁ。女の子はオラの考えていることなんて気付く様子もないままバケツを渡してきた。
バケツといえば水を入れるのが常識って前の飼い主さんから聞いてはいたけど、オラはストライダーだ。水なんて触ったらオラは死んでしまうから、代わりにそこにあるマグマを掬って返したら、女の子はびっくりした顔をしていた。
なんだろうと思っていたら次に女の子は胸ポケットにあるボールペンを渡してきたから今度はオラがびっくりした。文字の読み書きはある程度出来るけど、オラにボールペンを渡してくる人間なんてここでは初めてだったからしばらくオラはその場で固まってしまったよ。
それからようやくボールペンを持ってみようと思ったんだけど、しまった。このボールペンは人間用のサイズだからオラは持ち上げるだけで精一杯だった。
すると女の子がオラからボールペンを奪おうとするから、オラも引っ張り返したらスルッと転んじゃった。でもそのあと、女の子はオラからボールペンを取り上げるのを諦めてくれたから良かった。
それからオラは、ボールペンを持ち上げたり下ろしたりしてどうにか使いこなそうと色々とやってみることにした。このオラの様子を女の子はカゴの外でじっと見ていたけど、他は何もされなかったから気にしないことにした。多分だけど、この女の子は悪い人間じゃない気がした。