第16章 サツキ目線
研究所が燃えた。
記者仲間からそんな話を夜中に聞きつけて、私は眠気も吹き飛ばして現場に駆けつけた。
本当に燃えているフューチャーステーションを見て、私は言葉を失った。
まさか私が……と自責の念が込み上げては振り払う。いいや、この研究所はそもそも生命を軽く見、様々な生き物たちに酷いことをさせていた。私は少しでもその生き物たちを救うべきことをしたのだと自分で自分を説得した。
だけど心配なのは、まだ中にいただろう多くの生き物たちのことだった。特に私とお喋りをしてくれた手乗りMOBのストライダー、カズ。そこには手乗りスニッファーたちもいて、子どもも生まれたばかりだった。彼らはまだ研究所にいたはずである。
みんなを一気に助けるのは難しくて、明日準備をして連れ出そうと思っていたのに……後悔が何度も立っては崩してを繰り返す。カズは賢いMOBだ。どこかで無事なのではないか、と。
火事が収まったあと、私はもう一度研究所へ向かった。そこにはもう研究所らしい形はほとんどなくなっていて、捜査のために警察が立ち入り禁止にしていたのでそれ以上入ることは許されなかった。
「でも、中には沢山のMOBがいたんです」
私はあれやこれやと訴えている内に、本当は自分は記者であったとバラすことになってしまったが、それが返って幸運へと転がった。
研究所にいた数多くのMOBたちの本当の飼い主を探すために手を貸して欲しいと。
そうして私は、保護されたMOBたちの場所へ案内された。ビニールシートで囲われた即席のテントみたいな中に飼育カゴがいくつも並んでいて、私は多くのMOBたちをカメラに収めて彼を探した。
結果、カズどころか、ストライダー一匹もいなかった。