第14章 夜中
「ああ、やっと開いたよ」
聞き覚えのある声。
「その声……さんだーか?」
暗闇に声を掛けると、奥で何かが動いてゆっくりとその姿を現した。
「その声、カズクラ?」
そうして現れたのは、白と黒の模様の毛皮にエプロンを身に付けた、二足歩行の得意なパンダがいた。こっちを見てにこりと笑ったその手乗りパンダを見て、オラは間違いなくさんだーだと確信した。
「なーにしてるんだよ、さんだー、こんなところで!」
確かさんだーは前の飼い主のところにいるはずでは、と思いながら。
そんなオラの心境なんて知りもしないさんだーは、明るく笑って話を続けた。
「そりゃあもちろん、カズクラを助けに来たんだよ」それからイタズラっぽく笑って。「さんだーが来たからにはもう大丈夫!」
そう言って前足を腰に当てるさんだーはちょっと頼もしそうに見えた。
「ありがと〜。さんだーはよく出来たオラの相棒だっ」
とオラが言うと、さんだーは無邪気そうにアハハと笑った。
それからオラの後ろにいた子どもスニッファーが不安そうにさんだーを見るから、大丈夫だと言って落ち着かせる。さんだーは辺りを見てから子どもスニッファーを見つめて首を傾げた。
「カズクラ、その小さいのはなんだー?」
「ああ、この子はスニッファーだよ」
そういえば、名前までは聞いていなかったな。
けれども子どもスニッファーはフンフンと小さな鼻を鳴らすだけで何も言わなかった。そもそもスニッファーがオラと会話したことはないけれど、子どもスニッファーはどう思っているんだろうか。
「とにかく、早くここから出てお家に帰ろう」
とさんだーは言ったが、オラはすぐには頷けなかった。
「……こいつらを連れて行ってもいいか?」
「え?」