第4章 やさしさたくさん
まあ、その後は案の定この姿で帰って来た事にみんなに驚かれ、笑われ、理由を説明すると良くやったと犬岡は褒められ、私には無理をするなと夜久からキツく言い渡された。
「嬉しそうな顔」
「え?!そんな顔してる!?」
ニヤニヤ顔の黒尾の指摘に慌てて顔を両手で隠す。
「別に隠す事ないんじゃねえの?」
「いや、なんか恥ずかしい…」
「嬉しいなら嬉しいで良いんじゃね?」
「うん…」
嬉しい。でも、なんかくすぐったい。
もういらないと思っていた物をもう一度手にしたような、手に出来たような、そんな気持ち。
色んな物を失くして、落として、捨てて、ガランとしていた部分に、ふわふわとしたあたたかい物を入れられているみたい。
一度失くした経験があるからもう一度手にするのはとても怖いけれど、押し付けられる訳でも無く、こぐごく自然と与えられ、気付いたらこの両手いっぱいになっていて、手にしてしまえば離すのは惜しいとやっぱり抱き締めてしまう。
「黒尾」
「んー?」
「まだ怖いのは本当。でも、嬉しい。それも本当」
「そうか」
「うん…」
なら良かった、と大きな手が頭を撫でた。
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