第4章 やさしさたくさん
身長差もあり、歩くのが遅いのにも関わらず犬岡は来た時もだけれど戻る道すがらもずっと隣を歩く。
普通に歩いたらコンパスの長さもあってもう体育館に着いている頃だろうに、私に合わせてくれているのだろう。
さり気無く出来るなんて凄いな、なんて単純に感心してしまう。
「あ、曇って来ましたね。雨降りそう。予報で雨なんて言ってましたっけ?」
「いや、言って無かったと思うけど」
いつも見ている可愛いお天気お姉さんは今日は一日晴れでしょうと言っていた記憶があるけれど、見上げた空は犬岡の言う通り今にも泣き出しそうな黒い雲が覆い出している。
調子の悪さはこのせいか。
雨が降りそうな気候の時や雨の時にこの左足はじくじくと痛みを訴える。
「ごめん、犬岡。先行ってて良いよ」
「どうしたんですか?」
「ん、ちょっと足が痛くて…」
「じゃあ、おんぶします!」
「へ?」
間の抜けた声を出した私に、犬岡はこんな場所に置いていける訳ないじゃないですか!と力説したかと思えば、はいどうぞ!と背中を向けてしゃがんで来るものだから、さすがに大丈夫だからと拒否したものの、ダメです!とキッパリこちらも拒否された。
その後もおんぶする、大丈夫、の押し問答は続いてたが、結局折れたのはまたしても私。
これ以上時間を割いたらせっかくの練習時間を短くしてしまうし、他の誰かが様子を見にくるかもしれないし。
「重いよ?」
「大丈夫です!筋トレしてるの知ってますよね?」
「知ってるけどさ…。でも荷物もあるしさ」
「この大きさなら俺の背中と夢名前さんのお腹の間に入りますよ!」
「わ、わかった」
恐る恐る乗らせて貰った背中は見た目通りガッチリとしていて逞しく、子犬のように可愛く思っていた犬岡もやっぱりスポーツマンなんだなとしみじみ思ってみたり。
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