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【HQ】君の未来に祝福を

第4章 やさしさたくさん




「犬岡、ちょっといい?」


練習の準備をしていた犬岡に声を掛けると「はい!」と元気良く返事をし、駆けて来てくれた。


「ちょっと頼んでいいかな?部室の棚の上の物を取りたいんだけど」

「勿論です!」

「ごめんね。ありがと」


黒尾に一声掛けて犬岡と共に部室に戻る。





「これですか?」

「そうそう、それ。箱ごと取って」


目的は背伸びをしてもギリギリ届かない場所に置いてある段ボール。
踏み台を使えば届くんだけれど、中身が重いため今回は手を貸して貰った。
出来ない事は無い。
だけど、以前今回同様に高い位置にある重い段ボールを取ろうと踏み台を使って手にしたは良いものの、予想以上に重かったせいで踏ん張り切れずにバランスを崩してひっくり返った事がある。
それだけなら良かったんだけれど、たまたま委員会で遅れて来た山本にちょうどひっくり返った瞬間を見られていて、私は私で自分の間抜けさに呆れて床に転がったまましばし動きを止めていたものだから山本はこれはヤバイと慌てて体育館に飛び込んで、話を聞いた黒尾達が血相を変えて部室に駆け込んで来た。
その時には流石に私も起き上がっていたものの、ひっくり返ったせいで段ボールの口が開いて入っていた物は散乱。更には運悪く段ボールの角がぶつかった頬は赤黒くなっていたため保健室に担ぎ込まれた。
結果として大した事は無かったんだけれど、それ以来高い物を取るときは部員の誰かに頼むように黒尾と夜久、海からキツく言われている。
過保護かと言いたくもなるし、いちいち手を煩わせる事も申し訳ないけど、そもそも自分の失態なので素直に従うしか無い。
心配してくれての事だと分かっているし。
今日はちょっと調子が悪いから有り難いし。


「あ、やっぱりここにあった。犬岡、ありがと。助かったよ」

「大丈夫ですか?持ちますよ?」

「ん、これくらい大丈夫。そんなに重くないし。ありがと」

「いえ!持たせてください!」

「じゃあ、お願いしようかな」


引き下がらなそうな犬岡に、今回はこちらがお手上げ。
お言葉に甘えさせてもらおう。


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