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【モノノ怪/薬売りさん】R18裏夢まとめ

第2章 狂夜に憂う月


息を詰まらせる程の、血腥い匂い。

眼前には変わり果てた、愛しい存在。

もう光を宿さない、虚ろな瞳。

噴き出す鮮血と、溢れ出る臓物(はらわた)。

深紅に濡れた青白い肌。

生温かく、酷くぬめった感触に、己の両手を見つめる。

透けるように白い筈のそれは、べったりと、同じ深紅に染まっていた。


!?

まさか…

俺が…

殺した!?

嘘だ!

絶対に嘘だ!!

そんな筈がない!!

こんなにも愛おしいを、何故…!?





「ちょっと、大丈夫!?起きてっ!しっかりして!!」

「!?っ!!」

「大丈夫?かなり魘されてたけど…わっ!?」

薬売りは飛び起きるや否や、の腕を強く掴んで引っ張り、感触を確かめるように撫で回して、顔を擦り寄せる。

「…!?」

「嫌ぁ!何!?何なのっ!!」

凄まじい力でに縋りついて来て、寝巻をはだけさせ、露わになった胸から腹を両手で何度も撫で、顔をうずめて来る。

「傷は!?傷はっ…!」

「傷?何の事!?」

「血がっ…!!」

「大丈夫、落ち着いて!」

は薬売りを抱き締め、頭や背を撫でて、何とかなだめようとする。



事の起こりは、昨夜。

何があったのかは分からないが、余程強大なモノノ怪を祓ったと見えて、想像を絶する程、疲労困憊しての元に戻って来た。

は薬売りのそんな姿は今まで見た事がなく、唖然としながらも何故そうまでしてモノノ怪を斬るのか…と考えざるを得なかった。

そして薬売りは部屋に上がり込んだ途端、畳に倒れ込んでしまった。

「ああっ、大丈夫?寝巻は?布団は?」

「面倒くさい…」

それきり泥のように眠りこけてしまった。

は、世にも妖しく美しいその寝顔に見惚れながらも、憐憫の情を抱かずにはいられなかった。

それで仕方無く、は傍らに自分の布団を敷いて眠る事にしたのだった。
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