第3章 喰らうは甘味 喰われるは甘美
今までで一番、熱く甘美なの中に、もっと長くいたくて仕方無かった。
「はぁんっ…もう、イくっ!イっちゃう!!薬売りさん…っ!」
「ああ、っ…!中に、出すぞ…!!」
「うんっ…良いよ、来てぇっ…!!」
その刹那、の絶叫と共に、薬売りもの中に白濁の欲望を迸らせた。
同時に果てた二人。
は力無く、薬売りの上に倒れ込んだ。
繋がったままの其処から、欲望の残骸が溢れ出て来るのが分かった。
完全に力が抜け切り、眼を閉じているの顔を見やると、白濁にまみれながらも多幸感に満ちていて、優しく微笑んでいるようにも見える。
やはり、同じだ…
こうして想いを遂げ合った後と、腹を満たしてまどろんでいた時の、の表情が…
いずれも、人間が生まれながらにして持ち合わせている欲求だからこそ、満たされた時に得る幸福は、似たような所に辿り着くのかも知れない。
それから薬売りは、を畳に寝かせ、布で顔と身体を拭ってやった。
気を失っているのか、それとも眠ってしまったのか、は微動だにしなかった。
暫くして、がゆっくり眼を開けると、普段通りに着込んだ薬売りが煙管を吸っていた。
その姿をぼんやり眺めていると、静寂を引き裂くが如く、の腹の虫が大きく鳴いた。
「お腹空いた…」
「開口一番、また、それですか…」
「だって…」
「もう間もなく、夕飯が来ますよ。我慢して下さい。」
「うん…」
は少し不服そうに、ぐちゃぐちゃに着崩れた着物を直した。
「。」
「何?」
「今日のは、とても綺麗で、上手でしたよ。」
「なっ!?いや、そんなっ!うわぁ…」
照れ隠しか、は頬を紅く染めてジタバタする。
薬売りは、落ち着きのないを捕まえて強く抱き締めた。
「落ち着いて。明日は忙しくなりますよ。夕飯を食べたら、早めに湯に入って、今宵はしっかり寝るように。」
まるで何事も無かったかのように、平然と告げた薬売りに、は笑顔で返事をした。