第3章 喰らうは甘味 喰われるは甘美
「わあ〜美味しい〜!!」
「しかし、本当に、よく食べる…」
「だって美味しいんだもん!」
「だからといって、食べ過ぎですよ。もう、いい加減に…」
「何で?美味しいものを我慢する方が絶対、身体に毒だって。」
「……全く、仕様の無い。」
薬売りは、と出会った時の事を思い出しながらも、日が経つにつれて現れた本性が、完全に色気より食い気な事に呆れていた。
は今日、朝から宿で白飯を三杯もおかわりして、味噌汁に焼魚に御浸し、そして漬物と、昼は大盛りの鴨南蛮蕎麦、それからおやつに団子と饅頭を平らげてしまった。
勿論全て、薬売りが食べさせてやったものだ。
やがて、そうこうしているうちに日が陰り、また新たに取った宿で、今は部屋に置いてあった茶菓子を食べている。
生来、陽気で優しく、愛想も良いがいると、薬の売れ行きも上がる日が増えて来た。
それに好奇心旺盛で、何でもよく観察し、理解するのも早いは、今や薬の包装や整理まで手伝ってくれる。
ある日、興味深く薬売りの手元を眺めていたに、やってみたいとしつこくせがまれ、渋々試しにやらせてみたら、器用にこなしてみせたのだ。
それ故、食べ物ぐらい好きに買い与えてやっても良い筈なのだが…
「ああ〜幸せっ!!お腹いっぱい!ご馳走様でした。」
屈託の無い笑顔で、茶も飲み干したは、完全に腹も心も満足し切って、そのまま畳でまどろみ始めた。
夕飯が来るまでは、まだ少し時間があるため、ひと眠りするのに丁度良い。
薬売りはの、その多幸感に満ち溢れた顔を眺めていると、何故か妙に、想いを遂げ合った後の寝顔と重なってしまう。
こんなにも、良い表情をする女だっただろうか…
ひとたび思い出してしまうと、だんだん抑制が効かなくなってきた。
この際、理由など何でもいい。
兎に角、を滅茶苦茶に攻め立てたい。