第4章 “頂の景色”
「じゃあ、よろしく頼むね」
『はい、失礼します』
そう言って部屋を出て、自分の教室を目指す。
階段を登ろうと角を曲がったとき、誰かとぶつかった。
「うわっ!」
『…っ!』
そんなに強い力でぶつかっていないのに弾き飛ばされてしまった。足がもつれて後ろ側へ倒れそうになると、ガシッと腕を引いて起こされる。
「わ、わり…だいじょう……っ!」
その人が私を見て固まった。
『あ…あの、ごめんなさい』
「………女神さま?」
この人なんて言った?
『…人間、です』
「…天使?」
「…人間です」
「び、美少女!
…はうあっ!!!」
『!?』
普通です、と返そうとした矢先、左胸を勢いよく抑えてしゃがみ込んだその人は言葉にならない声を出していた。本当なら大丈夫ですか?と介抱するところなんだろうけど、なんだか怖すぎて近寄れなかった。
「ここにいたか…何やってんだよ田中」
「えんの、した…」
「あっ…コイツなんか迷惑かけました?すんません」
『いっ、いえいえ!どちらかというと助けていただきました、どうもありがとうございます』
「はうぅっ!」
「田中いい加減にしろ!」
ぺしんと頭を叩かれている。
『し、失礼します』
私は頭を下げて階段を駆け上がった。
あの人、多分野球部だよな…。
甲子園目指す高校生の迫力、すごすぎる。
1年生の階に着いて、廊下を歩きながら各教室のドアに取り付けられたクラス札を見る。
──1年3組
飛雄、何してるかな?
ドアからチラッと覗くと、机に突っ伏したサラサラの黒髪が見えた。全く…初日から寝てないで早く友達作んなよ。
私は後ろ側のドアから隣の1年4組の教室へと入った。