第4章 “頂の景色”
楽しそうにする母たちに呆れながら腕時計を見ると、そろそろ学校へ向かわなくてはならない時間に差し迫っていた。
『や、やば!…私そろそろ行かないと、先行くね!』
「あんた達もしかして高校でもそういうの続けるつもり?」
『うん、まぁ』
「ねぇ聞いてよ、私たち授業参観一緒に来るなって言われてるんだよ!?」
「そうよ!親同士が仲良いからって関係ないじゃないね!」
そういうの、とは…まぁ要するに“影山なんて知らん”のこと。
小学校の時の出来事を両親は知らないけど、私たちが学校では「鈴木さん」『影山くん』と呼び合っているのを授業参観で知ってとても驚いたらしい。
母たちには申し訳ないが、もちろん高校でも続けて行く予定だ。でも、今日の理由は実はそれだけではない。
「まぁうちはちょっと特殊だし、本人たちにしか分からないこともあるんだろうから」
「そうだな」
「…にしたって特殊すぎんだよ」
飛雄がポツリと零した言葉に、私も深く頷く。
「お前、さき行くんだろ?」
『はっ、そうだった…!』
「ほら」
そう言って地面に置いていた私のカバンを放り投げた。
『ありがと、じゃあ学校でね!』
「迷子になんなよ、鈴木さん」
『影山くんじゃないので、大丈夫です!』