第3章 旅立ちの日に
歩きながら右隣の飛雄の制服を見る。
『……』
「んだよ」
『すごいことになってるね』
「持ってかれた」
『女子に?』
「………」
『わわ、やっぱり女子なんだ!…そりゃそうか』
普段は近寄り難い雰囲気が出てるから、飛雄があんまり女子と話してるイメージもなかったけど、やっぱり卒業式の当たって砕けろというやつに隠れファンたちが勇気を出した結果なのだろうか。
まぁ飛雄って背高いし、運動出来るし、小顔で目が大きくて顔も整ってると思うし…普通に考えてみたらモテる、のか。
ちょっとおバカだけど、もしかしたらそういうタイプのほうがモテたりする場合も?
「ボタンなんかもらって何が嬉しいんだ?」
『あ!影山くんわかってないね、学ランの制服のボタンというのはロマンなんだよ。3年間、制服を着る度に絶対に触れる部分でその思い出の一部をもらうってことなんだから!』
「えらい詳しいな」
『プップちゃんに借りた少女漫画に描いてあったの!あれからずっと制服のボタンに憧れてた…のになぁ』
「…お前も、そういうの興味あんのか?」
『あるに決まってるじゃん!…え、どうしよ…今からでも誰かのもらってこようかな?これ逃したら一生後悔しそう…ちょ、私行ってく』
「やるよ」
ぶっきらぼうに伸ばされた左手には、北川第一のボタンが乗っていた。