第3章 旅立ちの日に
卒業式が終わり、各教室で最後のホームルームが行われた。うちの担任の先生はサプライズで私たちの生まれた年の曲で夢や希望がテーマのものを流しながら話していた。
「君たちの…っ、未来が、暖かな光溢れるものでっ…あることを…」
『……っ、ぅう』
「ははっ…ズビ…鈴木、俺の拙い話にたくさん泣いてくれて、ありがどう!」
クラス中がもらい泣き笑いに包まれた。
卒業式って涙脆い人を殺す最大の敵だと思う。
涙がおさまった頃に最後の号令がかかる。
先生が教室を出ていくと、他クラスの生徒も混じって交流会場のようになった。あたりはザワザワという効果音がぴったりだ。
「鈴木さん、いますか!?」
誰かが放ったその言葉に教室中が静まり返る。
振り返ると、正直あまり見覚えのない男子が立っていた。
それを見るやいなや、いたるところからヒューヒュー!いいぞ!と囃し立てるような声が上がった。
こういうのホントめんどくさい…申し訳ないけど正直そう思った。卒業式が近付くにつれて、こうして度々呼び出されては知りもしない人から好きだと言われる。そして断ればこちら側が罪悪感に苛まれるのだ。クラスの子からは当たって砕けろ精神かなと言われたが、その当たって砕けろ精神自体が砕け散ればいいとさえ思う。
『はい』
「話したいことがあるんですけど、廊下に来てもらってもいいですか?」
『廊下?』
私が歩き出すと、国見くんが肩に手をおいて「大丈夫?」と声を掛けてくれた。私は苦笑い気味に頷いて、廊下に出る。
すると、そこには見物客のような人集りが出来ていて一定距離をあけて私たちを見ていた。
『あの…』
「鈴木美里さん、2年の頃からずっと好きでした!僕と付き合ってください!」
廊下に響き渡る声。
差し出される手。
この人は一体誰なのだろう。そんなことを考えていると、目の前の男子の右奥で同じような現象が起きているのが見えた、しかも男女逆転バージョン。
「……」
『……』
その男子側と目が合う。
……飛雄じゃん。