第19章 能ある烏は翼を隠す

月島 side

「ッアハハ！王様、女子と喋る時あんな感じなの！？」

「やめてツッキー、俺ツボ入る！」

「あﾞ！？」

「なんであんなに一言一言が短いのさ！女子慣れしてなさすぎデショ」

「絶妙な敬語…やば…お腹、いたい…っ！」

「黙れ！どう話せばいいか分かんねえんだよ」





『あっ、ごめん！』



聞き覚えのある声に振り向くと、ネットの隙間からバレー側のボールが転がってきた。それをドリブルで拾った影山はポンと鈴木に手渡した。

「ほらよ」

『ありがとう』

「あぁ」

『いいなあバスケ、私そっちがいい』

「は？断然そっちだろ」

『じゃあ交換する？』

「いいぜ、じゃあ鈴木さんバスケやれよ」

『冗談だって！ツッキー、山口くん、止めて！』


王様の首根っこを引っ張ると、鈴木は背を向けて駆け出した。僕と山口は再び顔を見合せる。


「…そういえば王様、鈴木とは普通に喋れてるじゃん」

「マッ…マネージャーなんだから当然だろ」

「いや、クラスの子の方が長く一緒にいると思うけど…」

「お前らだって鈴木さんと普通に喋ってんだろーが」

「まぁ同じクラスだし」

「………っ、」


影山は何も言わずにバスケットボールでハンドリングを始めた。



「鈴木がすごい、ってことかな？」

「…それはある」



「影山ー！」

「…おう」


「月島、山口、こっち入ってー！」

「はーい！」
「………」



それぞれ呼ばれた僕らはビブスを着てコートの中に入った。