第8章 **08
クラウィス様はあまり顔には出してはいないものの···。
息子の顔を見たエリス様はクスクスと笑っていた。
「あら、女子会に殿方はあまり首を挟む物では無くってよ。それに、あなたは毎日学園で一緒にいられるじゃない」
「それでも、私は一日中だってリーチェと一緒が良いのです」
(クラウィス様!!···)
「おほんっ」
「あらあらまあまあまあまあ!あなた聞きまして?」
大々的に告白されたような言葉に、私は持っていたナイフとフォークをお皿の上に危うく落としそうになった。
私はじんわりと顔が熱くなるのがわかり、視線を下に向けた。
エリス様と言えば、心は純粋な乙女のように恋バナに心を弾ませ、シエル様は誤魔化すように咳払いをした。
自分の息子から恋バナが聞けるなど、滅多に無いだろう事にエリス様は嬉しいそうだ。
「母上!茶化さないでください!」
普段は余裕に溢れたクラウィス様の慌てふためく姿に、私は小さく肩を震わせ笑いを堪え切れずに「ふふふ」とつい笑ってしまう。
「あーもう、リーチェまで」
「申し訳ありません、クラウィス様」
「なら、母上に付き合った後は私の散歩に付き合って貰おうかな」
「あら、それはいいね。今は薔薇が綺麗に咲いているから、案内してあげるといいわ」
シエル様に柔らかな視線を向けたエリス様。
もしかしたら、きっと、公爵家に嫁いで来たエリス様を、シエル様が薔薇の咲く庭園を案内されたのかもしれないと、シエル様に向ける視線があまりにも柔らかなものだから私は思った。