第6章 **06
何事かと目をやれば、その中心人物はすぐにわかった。
言わずもがな···。
「リーチェ、迎えに来たよ。帰ろうか」
群がる女子の中をやんわりと抜けながら、私の目の前に来たクラウィス様が微笑んだ瞬間、「ふぁ〜···」と倒れる女子が数名。
流石は、乙女ゲーム人気ランキング1位の微笑みは殺傷能力が高い。
別に一緒に帰る約束はしていなかったのだけれど、こうして迎えに来てくれた事が、じんわりと胸を温かく締め付けた。
「はい、ありがとうございます。クラウィス様」
差し出された手の開いたに、私が手を乗せれば席をすっと立つように促された。
「それでは皆様、ごきげんよう」
(あれ?···手、繋いだまま帰るの?)
私は一生懸命冷静を取り繕い令嬢スマイルを貼り付けて教室を出るも、クラウィス様は一向に手を離したりはしなかった。
私達の姿を見た生徒達はヒソヒソと話し、様子を伺っているようだった。
「···あ、あの、クラウィス様?」
「何だい?」
「っ、!」
───びくっ。
恥ずかしさから手を離してもらえないだろうかと、恐る恐るクラウィス様の顔を見れば、くすっと笑った後に指を絡められてしまった。