第1章 山田利吉の場合。
城主は利吉を睨んだままで一向に口を開く気配がない。
仕方なく利吉が「ご要件を」と伝えると不機嫌そうに言った。
「昨日の夜尾形を抱えて部屋に入ったというのを聞いたんだがそれは誠か?」
「…え?」
部屋を聞いた使用人が言ったに違いない。
利吉はため息を我慢して、昨日の出来事を城主に伝えた。
城主はそれでもいらだちを隠せていない。
一人娘である尾形を得体の知れない忍者に誑かされていると勘違いしているのだ。
これ以上何も言うことがないので黙っていると、『違うんです!』と言い尾形が利吉たちの元へ来た。