第7章 第六章
朝、パパを起こさないように起き上がり、クローゼットの奥にしまっている小瓶を取りだし、中に入っている薬を一つ取り出して口に入れる。
今日はいつもより早く起きちゃったから、カラクリの仕掛けでもしておこうかな。
「おはようパパ、また後で起こしに来るからね」
すやすやと眠っているパパにそう声をかけてから、部屋を出る。
良かった、まだみんな寝てるみたい……ある程度音を立てても大丈夫かな?
「……この辺りに、この子達を配置して。ここにこの子を……んー!」
ホテルの周りをぐるりと回って、位置を確認する。
範囲は全体を囲うようにしたほうがいいから、これくらいにして……後は誰を仕掛けておくかだよね。
ガチャリと音を立てながら、カラクリを設置していく。
これで大丈夫かな、最後に彼に頼めば。
「……アーロン」
「……よおお姫さん、呼んだかい?」
名を呼ぶと、ガチャガチャと音を立てて地面から所々機械仕掛けになった悪魔が出てくる。
彼はアーロン、昔あいつに実験台にされていた悪魔の一人だ。
顔には包帯を巻き、左目は完全に隠れて見えないが意外とオシャレさんで、タキシードのような服を着ており、これがまた彼に良く似合う。
ただ実験のせいで身体の右半分を機械に変えられ、右手は細長いワイヤーのようになって、足には大きなタイヤがついている。
彼はずっと地面で生活しており、こうして呼べば毎回地面から顔を出してくれる……彼が起きていればだけどね。
あいつに実験させていた間、私がこっそり身の回りの世話をしていたのだが、随分と慕ってくれるようになり、今では私専属のカラクリ悪魔となってくれた。
「久しぶり、アーロン」
「久しぶりだなお姫さん、俺のことなんて忘れちまったのかと思ってたぜ?」
「ごめんね遅くなって、忘れてたわけじゃないの……」
「嗚呼全部分かってるさ、地面からは上が全て見えるからなぁ。お姫さんの新しいパパさんとやらは随分と過保護のようだしな」
恭しく私に跪きながら、アーロンは身体をガチャガチャ揺らして楽しそうに笑う。
しばらく談笑した後、アーロンにホテルとみんなを守ってくれるよう頼むと、快く承諾してくれた。