第2章 【裏】怪我後の身体調査 1
「おぉ〜!
待ってたよぉレイ!
巨人に噛まれて大変だったんだってぇ〜?」
レイはハンジの嬉しそうな声に気押される。
「ハンジさん…
なんでそんな嬉しそうなんですか…」
苦笑いしながらレイが聞くと、すかさず
「だってこんな未知の巨人に噛まれながらも軽傷ですんだ子なんてそうそういないんだよぉ〜?
もう朝から楽しみでどうしようもなくって…
歯型とか、どんな感じでついてるのか、さっそく見せてよ〜」
嬉しそうに目を泳がせながらハンジが近づく。
レイ
「ハ…ハンジさん…
怖いです…笑」
ハンジ
「怖がらなくていいんだよ〜!
ね、ね、歯形のついたキズ、早く見せて〜!」
そう。
レイはつい昨日まさに死ぬところだったのだ。
壁外調査へ出たが、突然の雨で信号弾がうまく作動せず、
気づいた時には背後から奇行種が猛烈な勢いで追いかけてきていた。
雨によるぬかるみに馬が足を取られスピードが落ち、マズいと思った時にはすでに遅かった。
ふわりと身体が浮いたと思うと、巨人がレイの身体を掴み、まさに飲み込もうとしていた。
わき腹と腿の内側に歯が立てられ、痛みが走る。
かろうじてブレードで口をこじ開け、致命傷はなんとか免れたが、口を閉める筋肉を切るまではブレードが届かない。
それに、少しでも気を抜けば巨人の口はぐしゃりとレイを引き裂き、咀嚼音と悲鳴が同時に巨人の口の中へと消えてゆくことになるだろう。
巨人も力を振り絞ってレイのブレードを振り払おうとする。
しかも、巨人の口から流れる血液がレイの手に流れ出てぬるぬると滑る。