第7章 しょうらいのゆめ
「『将来の夢』?」
「うん。どんな夢だった?」
食後の温かいお茶を手に、シャンクスはうーん?と首を傾げる。
「海賊?」
「え、海賊?」
聞き返すジウに、そう、と頷く。
「子どもの頃に漠然と、船が欲しい!と...改造されたハウスみたいな大きな船に乗りたくてな。船に乗るのは海賊だ!って」
「漁師じゃなく?」
子どもらしい、とジウがくすくす笑う。
「そうだった。デカい船、欲しかったな」
しみじみというシャンクスが目を輝かせる。
「釣りしたり、花火見たり...そうだ!どこか小島に土地を買って、浜辺でキャンプしたり!」
楽しそうだろ!?とワクワクしている目が彼らしい。
「ハウスのは小型船舶だからなぁ...クルーザー...大型なら9桁からってところか...」
(今、「9桁」って言った?)
ジウは、一、十、百と数える。
(1億!1億ですとっ!?)
そんな値段のものをこんな他愛もない会話から検討するのかっ!?と、つい洗い物をする手が止まって、デリバリーを選ぶようなノリで携帯を持つシャンクスを見つめる。
「クルーザーになると小型船舶じゃ動かせんしなぁ、1級と機関士取って...」
ふむふむ、と真剣な横顔で温かいお茶を啜る。
「できればオーダーで作りたいな...会社でなんか運用するか」
徐に立ち上がると、リビングのローテーブルについて、その下からペンとコピー用紙を取り出す。
「1〜2泊できるサロンクルーザーで...窓を広く取って...」
理想のかたちを書き込み、洗い物が終わって新しいお茶を運んできたジウを膝の間に抱き込む。
「ジウはどんな船だといいと思う?」
「うーん...あ、海の中が船から見えると素敵かも」
グラスボートか、と背後から書き記す。
「ベッドルームは独立だな」
「...キッチンあるといいね。釣ったお魚を料理して、それでお酒飲むとか」
「おっ!いいな」
最低4人は乗れて〜、と言うシャンクス。
「4人?」「子どもが生まれたら乗せてやりたい」
そうですか、と体を預けると、見上げたシャンクスがニコリと笑う。
二人で話し合った理想の船が『RedFORCE』と命名され、真っ白に輝く船体の進水式が行なわれたのは、そう遠くはない未来のよく晴れた初夏のことだった。
END